富士登山競走を完走する方法、練習方法

#手直ししました。

(唐突ながら、リクエストにお応えして...)
 高低差3000m&距離21kmに制限時間4時間30分。そんな富士登山競走を完走する方法。練習方法をツラツラと。あくまで底辺の市民ランナーによる底辺のランナー向けのアドバイス兼備忘録。釈迦に説法をするつもりはないのでエリートランナーはスルーされたい。

0.そもそも
(1) 自己紹介
 こういう人でも完走できるのか、という意味で自己紹介。
若い頃、特に運動せず。新潟出身なんでスキー(アルペン&クロカン)くらい。通勤カバンに弁当を入れると腰痛になる。健康志向で30代から市民マラソンにポツポツ参加の40代。エントリすると週2、3回ペースでジョギングし、エントリしていないと一切走らない。10kmは42、3分切れるくらい(公認コースで40分切ったことはありますがもう無理かと)、ハーフは90分切れないくらい。フルは東京マラソン1回ポッキシ、ギックリ腰から練習100kmで4時間切ったくらい。登山をするようになってからは市民マラソンで歩いたり途中棄権するなど大人の判断ができるようになった。ロードバイクに乗るようになってからメッキリ走らなくなってしまった。そんな171cm60kg。

<底辺振りがうかがえる実績>
 §2008年61回
  初出場。ペースが分からず山頂ゴール10m手前で関門アウト(涙)
 §2009年62回:
  悪天により山頂部門も五合目までで中止。トラウマが続く。
 §2010年63回:
  4時間19分弱。ようやく完走。感動。
 §2011年64回:
  4時間18分。完走。感動が少なく引退を決意。今に至る。

 #64回大会は出走2293人、うち完走1292人(56.3%)。自分は制限時間の12分前に辛うじて完走できたけど、その僅か12分間に400人以上が通過している。仮に4時間30分の関門が仮に10分前後するだけで完走率は大幅に変わる感じ。ちょっとトイレなんて余裕こいたら関門アウトになってしまう怖さがこの大会の魅力かと。

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#山頂完走者だけが貰えるTシャツ。悪天のため五合目までで中止になった62回大会は配布を渋るケチ振り...。
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(2) 完走できる人
A あくまで想定
 ギリギリ完走できているので私自身が底辺のベンチマークといえます。エヘン。63、64回大会のときの体力レベルを平地10kmのロードレースに換算すると45分弱くらいで走れる感じです。ハーフであれば95分弱くらい。意外に遅いのです。体力がこれに近いオッサンであれば完走できると思います。さすがに10kmで50分、ハーフで100分を切れない方は山頂部門の完走は難しいと思います。けど、そのレベルであれば、いくらでもタイムを伸ばすコツはあるので諦める必要はありません。
 なお、富士登山競走はコースが登りオンリー&半分が登山道であるため、体力や素質を作戦や予備知識でカバーできる余地が結構あります。さりとて、やはり限界があるので最低条件は自分より少しだけ遅い10km50分以内かなと思われます。ちなみにサブスリーランナー(同僚)でも完走できなかったりするのでレベルに関係なく作戦や予備知識は重要だったりします。

B 有利な人
 まず、前半11kmは舗装路なのでロードレースが速い人は当然有利になります。あと、コースは登り坂オンリーなので軽量な人も有利です。走る上で脂肪や燃費の悪い筋肉が荷物になるのは市民マラソンと同じですが登る上では平地以上に体重が物理的にハンデになります。実際、山頂に辿り着く人に大きい人、重い人はいません。ボルダリングやTJARの選手は皆さん小柄で軽量ですよね。市民マラソンを速く走れても絶対的に体重が重い人はウカウカできません。スリムでも65kgを越える人は相当なハンデになります。反対に市民マラソンが遅くても軽量な人は伸び代があったりします。
#減量はマラソンでは常套手段だし、自分も出走時には1、2kg落とすようにしてました。2Lのペットボトルを担いでいたら、まず完走できませんが2kgの減量は何とかなるのではないでしょうか。


1.坂道を登るコツ
 コースは前半がロードレースで後半は登山道。稀に平地がありますが、ほぼ100%登り。けど登り坂の走り方、歩き方には様々なコツがあって、使いこなすことで体感的に何割も体力を抑えることができるので紹介します。走法、歩行法を意識せずに登っていたら体力が無い自分などは完走絶対できないと思います。それくらい大事。いずれも激坂が何kmも続く場所か縦走トレイルで実際に練習しながらマスター(体感-->学習-->習得)するとよいと思います。本番では長丁場なので大局的な視点で1、2時間後の体力を心配しながら状況に合ったエコ走法、エコ歩行を選択していくことになります。
(0) 重心と加重タイミング
 あなたは急な階段状の登山道を登っています。まず平地での歩行と同じ歩き方をします。右足を前へ踏み出すと同時に加重して身体を持ち上げ、次に左足を前へ踏み出すと同時に加重して身体を持ち上げ...動作を繰り返します。当たり前の動作ですが山ではNGです。すぐに息が上がりペースを落とすことになります。理由は重心移動が完了する前に加重が始まっているからです。次に正しい歩き方をします。右足を前へ踏み出す、重心を前へ移動する、加重して身体を持ち上げる。次に左足を前へ踏み出す、重心を前へ移動する、加重して身体を持ち上げる...です。ポンチ絵のとおりテコに例えると分かり易いと思います。重心移動が完了する前に加重をすると大腿筋に強い負荷が掛かります。重心移動が完了して重量配分が最適化されてから加重すると負荷は減ります。ほかに例えるなら土木用の一輪車で土砂を運搬する際に支点の前輪より前に荷物を寄せると非常に軽く感じるのと似ています。重心移動は水平移動に近いため負荷は掛かりませんので「(前進動作は止めずに)加重動作を一拍間を置く」ことを意識するだけで済みます。踏み出す、一拍置いて加重する、踏み出す、一拍置いて加重する、の繰り返しです。
 実際に階段や登山道で試してみてください。できれば家族を背中におんぶして登ると踏み出し動作と加重動作を同時するのは無理があることが分かると思います。山の歩荷さんも背負子の頭上を越えるほど高い位置にまで荷物を載せることで重心を前方向に寄せて負荷を軽減しているのだと思います。

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(1) ナンバ歩行
 上記(0)と話は同じですが説明を変えてみます。まずスピード・スケートのロケットスタートをイメージします。ローラースケート、ローラーブレードでもよいです。左足を逆ハの字に開いておいて右足を右斜前に踏み出す。次は左足を左斜前に出す。以降繰り返し...。遠く前方から眺めている人からはスケーターが右へ行ったり左へ行ったりしてるように見えるハズです。このとき腕は踏み出した前足と同じ方向へ振っています。右足を右斜前へ踏み出すと同時に右腕(右肩)を右方向に強く振る(右オンリー)。逆の動作も同じ。通常の走法、歩行法では腕と足は互い違いになりますので腕の振りが左右逆になります。
 実際は両腕を同じ方向に振っているので腕だけでなく上半身を左右に振り子運動させていることになります。感覚としては上半身の左右振り子運動を前方向への推進力に変換している感じです。ヨットが横風を前方向の推進力に変換するのと似ているのかもしれません。前述のスケート類はいずれも摩擦係数がゼロで真後ろ方向への抵抗が得られない(つまりキックできない)状況においてナンバ歩行により推進力を補っています。
 これを登山に応用します。登山はシューズが地面にグリップする点でスケート類と異なりますが、登る際に重力が障害になるので前方向への推進力を何かで補いたい点は同じです。なので上半身の振り子運動を推進力にします。右足を右斜め前へ一歩進めると同時に上半身を右斜め前方向へ傾けます。両腕は必然的にスピードスケーターのように右方向へ振ることになります。代わりに右ヒザの上に右手をついて上半身をその真上に加重してもよいです。すべて右オンリー。次に左オンリー...右オンリー...後ろの人から見れば上半身ごと60リットルのザック(例えデス)が左右に振り子運動してるのがよく分かるハズです。あくまで主観ですが、これだけで大腿筋の活動量を2、30%抑えられます(あくまで主観w)。

(2) 背筋歩行(箸休めですw)
 歩行なのに背筋とは。階段を登る際に前足に加重するのと同時に上半身を気持ち後ろへ反らせるというもの。通常の加重動作は大腿筋を使いますが、これを大腰筋や広背筋にも少し肩代わりさせます。ヘソの辺りにある丹田を中心とした水平対抗ピストンエンジンのような独り打ち消し感を体感できると思います。実際に階段でやると結構忙しい動作になります。左右に振ったり後ろに振ったりと忠実にやり過ぎると身体が忙しくなって疲れるので動作は最小限にして微妙な加重加減を頭に入れておけばよいのかなと思います。次第に鳩のように小さく後頭部だけコキコキ前後に振れるようになると完成です。効果は無さそうなのでスルーでお願いしますw。

(3) 老人歩行に
 高めの踏み台を使って昇降運動をするとき、ヒザに近い太モモに手を載せて前屈みになってドッコイショする(当然ナンバ加重になる)。これだけで大腿筋の活動量を20%抑えることができます。これは私の主観ではなく山と渓谷誌に載っていた測定値です。実際に階段を休まずに延々登り続けることができるようになります。
 補足すると登りでは上半身は荷物になるので、これを大腿だけで支えるのではなく腕にも負担してもらいます。当然両腕で支えると効果が大きいです。階段が続く場所では前屈みになって両手を右モモのヒザに近い部分に載せてドッコイショ、左モモに載せ変えてドッコイショ...(両手を交互に載せ替えるのは煩雑ですが)効果が高いです。通常、軍手が必要になるのは岩場が始まる七合目以降ですが、私は馬返しから使います。
 大腿に乗せた手が汗で滑らず確実に上半身を支えられます。ナンバ歩行と合わせて計50%エコ(誇張癖アリ)。単純に高低差3000mが1500m相当!?になると思えばバカにできません。

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(4) ヒザを曲げない歩行(訂正)
 ヒザを曲げるとこんどは伸ばす必要があります。延ばすときに筋力を使います。なので最初から曲げないというもの。どうするかといえばスピードスケートのロケットスタートのように左右に脚を振る感じ。当然、曲げないことに拘り過ぎると返って効率が悪くなりますので、そこは程ほどに。

(5) ピッチ走法&歩行
 ロード区間は11kmの坂道を走り続けます。脚の筋肉は大量に酸素を消費します。AT&LT値を超えずに(有酸素息内で乳酸を溜めずに)登り続けるには走るペースを落とすことになりますが当然タイムまで遅れてしまいます。ペースはあまり落とせないのでストライド(歩幅)を延ばしてペースを維持するか、もしくはピッチ(回転)を上げ歩数を刻んでペースを維持するか...結果的に走るペースが同じであればストライドは疲労しやすく、ピッチは疲れません。これはロードバイクの世界では常識。チャリはペダル(ケイデンス)を90rpm位で回すと効率的と言われています。ビンディングペダルが付いていないママチャリやエアロバイクでは不可能な回転数ですが実際に長い距離を乗っても疲れません。反対に大きなギアを使って低回転で漕ぎ続けると速度は同じでも帰り道は脚が売り切れになります。
 話をランニングに戻します。実際に何kmも続く激坂で試すとストライド走法で登り続けることは難しいことが分かります。フクラハギが簡単にパンプアップします。これをピッチ走法に切り替えるとアレって言うくらいノンストップで行けるようになります。本番では次第にキツくなる斜度に応じて走るペースを下げつつも、同時にピッチを細かく刻んでペースダウンを最小限に抑えます。マラソンでも後半バテてきたときはピッチを上げて少しでもペースを維持する人もおられるハズ。
 山岳区間の歩行においてもピッチを徹底的に刻みます。どんな急な斜面でもピッチを刻めば高低差は減らせます。高低差がなければ平地と同じわけです。歩幅50cmのペースが維持できなければ25cmにする。無理なら15cm。さすがに歩幅5cmまで落とすとまったく疲れないです。どこまで刻むかは、斜度に応じた運動強度と無酸素域と有酸素域の閾値(AT値,LT値)とご相談になります。有酸素域の範囲内で歩幅を選ぶのは当然ですが、上述のとおり、ピッチは多めに刻んだほうがバテません。さりとて刻み過ぎると前へ進みませんw。ちなみに富士山のガイドさんも初心者には歩幅をシューズの長さに抑えると楽に歩けると説明しているそうです。

(6) フォアフット走法(≒ベアフット走法、フラット走法)
 フォアフット着地の真髄は坂道で使ってナンボです。ピッチ走法と同じく平地より坂道でメリットを強く体感できます。ずばりピッチ走法と組み合わせることで、どんな激坂でも休まず延々と登り続けることができるようになります。走法なので底辺のランナーが使えるのはロード区間になります。トップクラスは岩場が始まる七合目まで駆け上がるとか。必然的にフォアフット着地をしているハズです。

 ぶっちゃけ裸足でアスファルトを走れば必然的にフォアフット走法になります。素足でヒール着地で走ったら怪我をしますよね。素足で走れば自然にフォアフット(足裏の前部)から着地するようになり、下半身は前傾フォームになります。前足の爪先は高く上がらずに後ろ足のカカトがお尻に着くくらい高く上がる走りになります。カカトは全く着地しないわけではありませんがカカトからは着地しません。フォアフットもベアフット(素足)もネーミングから足裏の前部分だけ着地して走るものだと思われやすいのですがカカトは着いてもよいです。フラット走法もネーミングから足裏の中心部分で着地するものだと思われやすいがフラットに着地するには必然的に爪先着地を意識します。いずれの走法も旧来のカカト着地と異なる点は同じなので意図は大差ないのだと思います。
 理論的には、走る動作は前へ蹴って前進する動作と着地して止まる動作の繰り返しと云われています。ヒール着地は着地の際の止まる動作を抑えることが難しく、フォアフット走法は最小限で抑えられます。平地では違いは体感しづらいかもしれませんが、登り坂においてその違いは明確で斜度が強まれば決定的となります。
 理論的なことはさて置き、実際に何kmも続く激坂で試すと旧来のヒール着地で登り続けるのは難しいことが分かります。フクラハギが簡単にパンプアップしてしまいます。これをフォアフット着地に切り替えるとアレって言うくらいノンストップで行けるようになります(うーむ、ピッチ走法も同じことカキコしているような)。

 #初代山の神、今井正人は箱根5区をフォアフット着地(足裏の前部を置く感じ)で駆け抜け、古風なヒール着地(踏み込んで蹴り上げる感じ)をしていた他の選手とは明らかに違う走り方をしていました。ちなみに走る行為を”前足と後ろ足が同時に地面から離れること”と定義するとフォアフット着地&ピッチ走法はロードに限らず登山道でも延々と休まずに”走って”登り続けることができます。自分は伊豆ヶ岳縦走路がせいぜいで本番では試したことがないので誰か試してみてください。

<走法別の比較>
 1:フォアフット着地&ピッチ走法
   --> 今井正人の箱根五区。一番エコ。
 2:フォアフット着地&ストライド走法
   --> パトリック・マカウ。底辺のランナーの場合、登りでは少し無理があるけど意外にイケる。ちなみにフォアフット着地は負荷が少ないので激坂下りではコレが一番。
 3:ヒール着地&ピッチ走法
   --> 多くの日本人ランナー。ピッチを刻んでもヒール着地だと登りはあまりラクにならない...。
 4:ヒール着地&ストライド走法
   --> 野口みずき。負荷大。登り坂に至っては拷問。


<課題>

 傾斜20-30度の登山道を有酸素域内を維持したまま走り続けてください。ピッチ走法とフォアフット走法を理解していれば筑波山などはノンストップでクリアできます(歩幅は幾らでも刻んでください)


(7) 鏑木選手の歩行法
 トレラン本で内股歩行を紹介しておられた。階段で簡単に体感できます。階段状の段差において爪先を内向きに着地してオカマチックに登ると疲れないというもの。確かにお尻が後ろに突き出る感じになって骨盤が前傾姿勢になります。結果的に集中しがちな大腿四頭筋の外側だけでなく内側も使って登ることになるので疲れません。
 ただ上体の重心を外へ外へ逃がすナンバ歩行と動きが相反するのでナンバ加重のメリットが享受できなくなります。老人歩行も使えません。下半身のみで登ることになるので自力のある人向けなのかもしれません。あくまで優勝経験者の歩行法なので底辺のランナーは躊躇するところです。自分はガニ股なので階段くらいでしか試したことがありませんw。

(8) クライミング
 腕を使うけどモモに手を載せる老人歩行とは少し違う話です。七合目以降から現われる岩場では二足歩行が出来ても敢えて腕をついて四足歩行をします。足で蹴り上げるだけでなく、遊んでいる両腕を積極的に使って体を引き上げ、下半身の負担をできるだけ補助することを意識します。鎖やロープがあれば積極的に両手で掴んで体を引き上げます。大腿筋は喜ぶハズです。
 特に痙攣が発生しやすい岩場では(一度ケイレンになると大幅にタイムをロスするので)、リスクを抑えるためにも腕が使えるときは積極的に腕を使い、下半身だけで登らないようにします。あとトレッキングポールの利点を知っている人は分かると思いますがトレランではバランスを立て直す際に結構体力を消費しています。ポールは使えないので代わりに手を付いて無駄な浪費を抑えましょう。
 #2000m近くを登ってきて最初に岩場に取り付く際に気を付けたいのが痙攣です。まず、絶対に大股で登らないこと。バチッときます。両腕でフォローしつつピッチを刻んで登りましょう。そう言う私自身、61,64回大会のとき最初の同じ岩場で痙攣が起こしていますw。

(9)ルートファインディング
 登山道に入ると道幅は狭くなり部分的にシングルトラックになります。けど道幅がどんなに狭くてもエコな通過ラインとそうでないラインがあります。なので常にルートファインディングを怠ってはいけません。5%エコで済むラインを選び続ければ単純に高低差150m分も短縮できる!?かも。
 A 大きな段差を避ける
 馬返しから暫くは道の中央に土砂溜めのお堀があって大きな段差になっています。最短距離だからといって中央ルートを選ぶと体力がジワジワ奪われるので避けたいです。まだ先は長い。また、山頂まで無数に出現する階段や段差も、より小さな段差を探して一歩当りの高低差を小さくして登ります。大股で段差をクリアしたほうが歩数が少なくて済みます。けどストライド走法やロードバイクのハイギア選択と同じく後で反動が返ってきます。反対に小股にしてピッチを刻めば後半タレません。斜度に合わせて歩幅と高低差を刻んでチマチマと登ります。特に七合目以降の岩場では大きな段差を選ぶと(片足に長い時間負荷が掛かり)簡単に足が攣るので気をつけたい。あと段差ではありませんが登山道でも舗装路でもカーブでは大回りして斜度の緩いルートを選びましょう。多少の距離や歩数が増えても少ない負荷で登れるほうが後半タレません。

 B 固く締まった場所を選ぶ
 六合目以降はザクザクの火山灰になります。下山バスで同席した60回大会で完走して61回大会で完走できなかったというオジサン曰く、前年に比べて晴天が続いたため、火山灰が乾燥して締りが悪かったのが敗因とのこと(全体でも完走率が6%落ちた)。確かに酷い箇所は10の力で蹴っても進みが5に半減するような感じです。
 道幅が狭くても微妙に締まりの悪いルートと固く締まったルートがあるので後者を選びます。固く締まった箇所がないときは他人の踏み跡(ツボ足)など、僅かに階段状になっている箇所を利用します。足を置く場所も斜度があると筋力を浪費し続けるので少しでも平らな箇所、つまり蹴りやすい箇所を目ざとく探しながら登ります。

(10)ガニ股歩行
 7合目にもなると足が攣って動けなくなる人がポコポコ出てきます。自分も61,64回大会のとき、7合目の最初の鎖場(要注意)でバチンとコムラガエシになって時間をロスしました。よく痙攣は脱水症状やミネラルバランスの崩れが原因と聞きますが、案外裏づけのある論文は皆無なのだそうです。実は登山競走の八合目付近で、みな経験するであろうフクラハギのあの感覚は汗を掻かなくても再現できます。
 自分はクリートカバーを付けたロードバイク用のビンディングシューズで歩いていてこれを知りました。なのでシューズのつま先側に厚さ5cmくらいの角材を貼り付けて歩けば再現できます。つまり、フクラハギが攣る原因は、登り坂故にヒラメ筋やアキレス腱に弛緩動作がなく終始ピンと張っているため、フキラハギの血流ポンプ効果が働かず血管や神経が筋肉によって圧迫され続け、血流や神経信号が滞るのが原因のようです。仮に段差がないツルツル加工したピラミッドを登り続けたりすれば簡単にパンプアップすると思われます。論より証拠、カカトを付いてウンコ座りできないくらい足首が硬い自分は、毎年ロード区間でフクラギが痺れ始めてしまいますw。
 自分なりに見つけた対策は、フキラハギの血流ポンプ効果を働かせるため、歩行する際に後ろ足の裏を空に向けて弛緩動作を入れることを意識しました。アキレス腱とヒラメ筋肉の緊張が確実にリリースされるようになります。もう1つの対策はガニ股歩行です。ガニ股歩行は斜面に角度に対して足裏&足首の角度が抑えられるので、結果的にヒラメ筋やアキレス腱の突っ張りが抑えられます。これは自分を含めガニ股の人=足首の硬い人には言わなくも分かると思います。あと大会までの対策は、アキレス腱やヒラメ筋を柔らかくしておくこと(短期間でどうにかなるとは思えませんが爪先側を高くした板などを使うとか)。更にプラシボ狙いでミドリ安全の塩熱サプリのタブレットをポーチに入れておけばよいでしょう。クエン酸たっぷりなのである意味間違ってはいません。ちなみに痙攣に効くといわれる芍薬甘草湯は、本番でも試しましたがカカトの硬い自分には1円も効果がありませんでした。

(11)積極的な深呼吸
 八合目にもなると周りの選手の肌が面白いくらい黄色になってきます。黄色の肌は酸欠、高山病のサインなのだと思います。これ、運動量に対して慢性的に酸素供給量が足りていないのだから黄色になるのは当然と思うかもしれません。けど不思議なことに(心拍と違って呼吸量は意識して増やすことができるにもかかわらず)、周りの選手の呼吸を観察すると、みな深呼吸をしている様子がありません??筋肉は酸素食いなので、間違いなくパフォーマンスが発揮できていないことになります。
 通常、運動をすると筋肉が酸素を消費して血中酸素濃度が減ります。これを自律神経がキャッチして呼吸量や心拍数を増やします。ところが山では自律神経が正常に働かない高山病体質の人がいます。で、周りの人を反面教師にします。高山病は簡単に防ぐことができます。自律神経だけに任せず意識して呼吸量を増やせばよいのです。積極的な深呼吸は、まず息を吐くこと。そうしないと吸えません。呼気はロウソクの火を消すように口をすぼめると気道がチャンバーのように広がります。吸気は横隔膜を下げ、肺胞のツブツブを目一杯広げるイメージで腹式呼吸する。むやみに呼吸回数は増やしません。そして吸う時間より吐く時間を長くします。息を吐く際に血中酸素濃度が上がります。深い呼吸を山頂まで絶えず続ける。そうすれば平地に近いパフォーマンスが発揮できるハズです。酸素需要は大きいので過呼吸になることはないでしょう。実績では八合目から山頂までは32分台。積極的深呼吸を意識したせいで追い越し基調で登れました。
 #意外なことに一般登山のときと違い富士登山競走では酸素の薄さは体感できません。酸素の薄さを体感するのは休憩を入れて心拍が下がった状態から再び登り始めたときです。一般登山ではコマメに休憩するので登り始める度にキツく感じますが、富士登山競走では休憩なしで心臓が常にパワーバンドでフル回転しているため、酸素の薄さは体感できないようです。酸素が薄いにも係らず、それに気が付かないことを前もって頭に入れて意識して積極的な深呼吸をしましょう。あとブリーズライトを鼻に貼るとw。ちなみに下山の際は負荷が減って心拍が急に落ちるので高山病体質の人は下山の際も積極的な深呼吸がオススメです。

(12)ペースコントロール
 登山初心者とベテランの違いの一つにペースコントロールがあると思います。私が職場の同僚と初めて富士山に登った際、女性年配者のパーティと抜きつ抜かれつになりました。こちらのパーティは飛ばして休憩の繰り返し、女性パーティはトロトロイーブンペースで休み無し。つまり我々は運動強度が強すぎて無酸素域に達していたということです。インターバルトレーニングがキツイことは分かると思いますが我々の登山はまさにそれでした。
 山では運動強度を常に意識して有酸素域内に抑えつづけること、簡単に言えば息が上がらない程度のペースを維持することが重要です。無酸素域に入ると筋肉がダメージを受けパフォーマンスが低下します。正しくは斜度が増して運動量が増えてきたと思ったらペースを落とす。有酸素と無酸素の閾値(AT値、LT値)の何割までペースを上げるかは残りの運動時間と体力を考慮して決断します。コースは加速度的に傾斜が増し、運動強度も同様に増していきます。前半からAT値ギリギリのペースだと最後まで体力が持たないので余力は残しておきます。経験の浅い人はハートレートセンサーに頼るのも手です。注意点として心拍数は自律神経が制御しているので体調次第で一定ではありません。慣れない土地で睡眠不足の上、高度もあって、長丁場を最強の運動強度を維持し続ける必要があります。いつも通りの数値が出ないことも念頭におきましょう。この辺りは脳内補正かキャリブレーションするなり。

#64回大会。右の青シャツが私。

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by tomorou_takurou | 2012-06-10 21:47 | 旧ブログ
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